2016/09/22

リフター魂85 1.5秒のために

一気にバーベルを引き上げるスナッチは1秒半の技。
その一瞬のために、4年間モチベーションを保ちながら技と精神を鍛え上げる。

WL協会前会長の小池百合子東京都知事の言葉である。
三宅宏実選手のリオ五輪銅メダル獲得を受けて、しばしばメディアやSNSでこの内容の言葉を発信されている。

管理人は、選手の名前がコールされた時から試技は始まっていると考えている。
時計が動き始め、リフターは心を整えプラットホームへ向かう。
プラット中央に鎮座するバーベルを見下ろし、集中力を高め、そしてシャフトに触れる。

その時点ですでに試技は始まっていると考えていたし、今もそう思っている。
それでもわずか数十秒である。

小池前会長は、さらに短い“1.5秒”という時間軸を強調された。
リフターは、その一瞬に全てを懸けるということか。

離床したバーベルを頭上で制止させるまでの時間。
その間、彼らは何を見、何を思うのだろう。

瞬きのような刹那。
ファーストプルに始まって多くの動作をこなすリフター。
彼らにとっても、やはりそれは1.5秒なのか。
それともスローモーションで流れて行く世界なのか。

「ウエイトリフティングは非常に繊細な競技です」と、メダリスト・三宅選手は語る。

リオ五輪の閉会式で、オリンピックフラッグが小池都知事の手に引き継がれた。
パラリンピックも閉幕し、アスリートたちの新たな4年が始まった。

そしてリフターたちは、1.5秒のために心と技を磨く。
2020年東京五輪を目指して…。


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国内外の試合会場や練習所に度々足を運び、選手を激励してくださった小池前会長。
前会長がいらっしゃると、その場に大輪の花が咲いたようだった。♪

都知事の職務に専念して諸問題を解決し、東京五輪・パラリンピックの成功に向けて力強く前進していただきたい。

3年間、ありがとうございました(^_-)-☆
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2016/08/17

リフター魂84 バーベルに恋して

リオ五輪重量挙げ全日程終了

三宅選手、銅メダルおめでとう♪


傷ついた心と体でメダルを死守した三宅宏実選手。

リオ五輪を間近に控え、「心の痛み止めがほしい」とつぶやいた彼女。
腰だけではなく、心にも痛み止めを打って試合に臨んだのだろうか。
試技の後、愛おしそうにバーベルをハグする彼女の姿が世界に配信された。

管理人は、ロンドン五輪の嶋本麻美選手の姿を思い出していた。
4年前、彼女の6本目の試技は失敗に終わった。

自分が落としてしまったバーベル。
行き場を失い、悲しく転がるバーベル。
悔しさと切なさが入り混じったような目でそれを見つめ、追いかけるようにそのバーベルに手を伸ばしていく彼女。

彼女はバーベルに恋している!?
その時、そう思った。

三宅選手も、バーベルに恋しているのだろうか。

挙がっても… 挙がらなくても…
リフターにとってバーベルは、時に家族よりも長い時間を共に過ごす運命共同体。
誰にも言えない悩みも、人知れず流した涙も知っている。

バーベルにとっても、自分に存在価値を与えてくれるリフターは大切なパートナー。
リフターなくして輝くことはできないから。
「挙がって!」と祈る以上に、バーベル自身が「落ちたくない! 挙げてほしい」と願っている。
その身をリフターたちの手に委ね、“彼ら”はひたむきに軌道を描く。

プラットホームの中央で、パートナーと共に喝采を浴びるため…。

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バーベルをハグする三宅選手
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バーベルに接吻する海外の男子選手たち
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(IWFのPhotogarallyより)
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2016/07/18

リフター魂83 誰のために挙げる?

間もなくリオ五輪開幕


一本目は応援してくれる人たちのために。
二本目は母のために。
三本目は父のために。
そんな思いを胸に試合に挑みました。

女子ウエイト界に初のメダルをもたらした三宅宏実選手の言葉である。

この人のために挙げたい。
その気持ちが重力に勝ったとき、重いバーベルは挙がるのだろうか。

4メートル四方のプラットホーム。
父も、母も、応援してくれる人たちも、誰もそこに立ち入ることはできない。
16平方メートルの空間に、彼女は一人立っていた。
けれども彼女は、決して孤独ではなかった。

あの銀メダルの歓喜から4年。
リオ五輪が間もなく開幕する。

先に決定していた5人に加え、2人の男子選手が代表に名を連ね、男女合わせて7人の五輪代表が出揃った。

背負っているものは違うかもしれない。
目指すところもそれぞれだろう。
それでも全ての選手に、4メートル四方のプラットと6本の試技が平等に与えられている。

リオまであとわずか。

16平方メートルの空間で、あなたは決して孤独ではない。
祈りにも似た数多の視線が降り注ぐプラットホーム。

あなたはその一本、誰のために挙げますか?


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(協会のFacebookからお借りした)

リフター魂82 リオ五輪代表決定
この代表発表から約1ヵ月間。
モチベーションを保ちながら練習を続けてきた高尾宏明選手(56キロ級)と中山陽介選手(62キロ級)が代表に加わり、7人の五輪代表が揃った。
リオのプラットで、悔いなき一本を!!
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2016/05/28

リフター魂82 リオ五輪代表決定

最終予選~ そして代表決定


リオ五輪最終予選となった今年の全日本選手権。
現地観戦は叶わなかったが、外出先や移動中なども、状況が許す限りネットで観戦していた。

ウエイト協会が作成した選考ランキング表を意識し、選手たちの戦いは進んだ。
大会後半に出場する選手は、先に試合を終えた選手たちの結果を受けて、それに並ぶため(できれば上回るため)、ランキング表と照らし合わせて挑む重量を設定した。

リオ五輪出場枠は、女子4枠(内1枠は内定済み)。
男子はわずかに1枠である。
その1枠も、初日でほぼ決まったかのように思えた。

それなのに…
なぜ、無理してそんな重量を?
男子重量級の試合を観ていて、そう思った。

その理由を、後に知った。
他国のドーピング違反により、男子の出場枠が増える可能性がある。
彼らはそれに懸けたのだと。

世界の基準に照らし合わせるなら、厳しい重量級。
それでも彼らは…
彼女もまた…
迷わず攻めた。

全日本連覇の栄冠を棒に振ることになっても…
日本新記録樹立の機会を捨てることになっても…
それ以上に欲しいものがあった。
それ故に、選択肢は一つしかなかった。

それほどまでに、4年に一度の祭典は甘美なものである。
けれどもその扉は寡黙に凛とそびえ立ち、アスリートたちの挑戦を跳ね除ける。

そして今回、固く閉ざされた扉を開いたのは、以下の5人の選手である。
届かなかったリフターたちの思いをその手に込め、彼らはリオでシャフトを握る。


男子62キロ級 糸数陽一選手

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女子48キロ級 三宅宏実選手

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女子53キロ級 八木かなえ選手

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女子58キロ級 安藤美希子選手

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女子63キロ級 松本潮霞選手

思えば、彼女について書いたことは一度もない。
かなり前に数回言葉を交わしているが、五輪代表に選出されるまでに成長するとは…
リオでの活躍を期待する。



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コルコバードの丘に立つキリスト像が、アスリートたちの戦いを見守る

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2013/09/09

リフター魂51 「TOKYO 2020」

「TOKYO」
ジャック・ロゲIOC会長の言葉が、早朝の日本列島を駆け巡った。
2020年東京オリンピック・パラリンピック開催決定の瞬間である。

管理人の脳裏に、2年前の日韓中フレンドリーシップトーナメントで、中国の選手が230キロを差したときの光景が浮かび上がった。
ディスクの重みによってシャフトがしなり、それによって描かれたアーチの美しさに息を呑んだ、あの日の記憶が蘇った。
(「リフター魂24 ザ・重量挙げ」)

7年後の東京で、あのアーチと再会できる。
そう思うと、胸が躍った。

姪の友人に、パワーリフティングの選手がいる。
高校記録とジュニア記録を持ち、海外でも活躍している彼。
遠征の合間に、時折ウエイトの観戦にやってくる。

パワーリフティングは、パラリンピックの正式種目になっているが、オリンピックの種目には入っていない。
彼との会話の中でその話に及ぶと、「ドーピングの問題もあるから…」と、彼の表情が曇った。
そして、彼はこう続けた。
「ウエイトの場合は、技術も必要だから」

パワーリフティング界で名を馳せる彼の口からその言葉を聞いたとき、管理人はウエイトファンとして非常に嬉しく、誇らしく思ったものである。

人は、力だけであんなことはできない。
レオニド・タラネンコ選手の266キロのジャークの動画を見たときに、そう思った。

バーベル離床後、彼の動きに連動してシャフトが上下に弧を描き、それに伴い、両端の幾重にも重なったディスクが、激しく垂直に揺れる。
床に置かれた状態では無機質な鉄の塊でしかなかったバーベル。
それが彼の肉体と一体化したとき、まるで魂を持つ生き物のように躍動したのである。

人は、力だけで、絶対にこんなことはできない。

シャフトが描き出す曲線。
それは、リフターの汗と涙によって生み出された技術が織り成す芸術である。
リフターの思いがバーベルに伝わり、両者が一つとなったとき、そこに生きたアートが生まれる。

力強く、迅速で、美しく、時に繊細なスポーツ。
ウエイトリフティング。

2020年、夏。
「TOKYO」のプラットホームに、いくつものアーチがかかる。


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