2012/06/29

リフター魂33 重力に逆らってまで

先日、NHK BS1で、スポーツドキュメンタリー「重力に逆らってまで~映画監督・西川美和が見た女子ウエイトリフティング~」が放映された。
管理人は、残念ながらそれを観ることはできなかった。
したがって、その感想をここで語ることはできない。

映画監督として、高い評価を受けている西川美和氏。
彼女は作家としての才能にも恵まれ、かつてその作品は直木賞候補にも挙がっている。
映画と文学、その両面において優れた表現者である彼女の感性に、ウエイトリフティングは何を語りかけたのだろう。

9月公開予定の彼女の最新作「夢売るふたり」には、女子ウエイトリフティング選手が登場する。
五輪を目指して練習に励むリフター“皆川ひとみ”役を演じるのは、劇団扉座の女優・江原由夏さんである。
松たかこさんなど、そうそうたる出演者の中にその名を連ねる彼女は、オーディションでこの役を射止めた。
4か月間、毎日トレーニング漬けの日々だったという。
限られた枠を勝ち獲るために汗を流すのは、アスリートの世界も役者の世界も同じである。
この作品の中で、“皆川ひとみ”はどのように描かれているのだろう。
きっと健気で一生懸命に生きる、とても可愛い女性として描かれていると、管理人は信じる。

西川監督は、身体の大きな女性アスリートががむしゃらに健闘する様子が好きだと語る。
黙々と生きている勝負師を探して出合ったのがウエイトリフティングという競技だったと。
この映画の企画にあたり、その取材のために訪れた金沢学院大学で、トレーニングに打ち込む女子リフターの姿に心惹かれたという。
そして、今回のドキュメンタリーが誕生した。

この番組の中で彼女がカメラを向けた相手は、女子ウエイト界の女王・三宅宏実選手でもなければ、ニューヒロイン・八木かなえ選手でもなかった。
長きに渡り、真っ直ぐに、ひたむきに、女子ウエイト界の底辺を支え続けてきてくれた選手たちだった。
城内史子、嶋本麻美、橋田麻由、齋藤里香の4選手である。
ロンドン五輪のプラットホームに立つために、ひたすらバーベルと向き合ってきた彼女たち。
みんな一緒にロンドンへ行くことは叶わないと知りながら。
彼女たちの喜び、誰も知らない憂いを、“西川美和”という才能は、豊かに映し出してくれたことだろう。

時に非情でもある代表選考はすでに終わり、ロンドン五輪はまもなく開幕する。
嶋本選手をはじめ代表選手たちには、ロンドンの地で、“重力に逆らってまで”その一瞬に全てをかけてほしい。

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2012/06/04

リフター魂32 金城聖丸選手

眩い栄光の中で、ともすると足元を見失いそうなとき、自らを省みる便(よすが)として、時に人は試みにあう。
彼の場合もそうだった。
光と闇。
その両方を見て、そして立ち上がってきた男が、最終学年になって臨んだ全日本学生選手権で連覇を果たした。
金城聖丸選手。平成国際大学の4年生である。

選手権の日、姪が切り出した。
「だいぶ前に聖丸さんからメールをもらってて・・・」と。
「いつも『ぶどうの木Blog』で沖縄の選手のことを取り上げてもらって、沖縄出身の者としてすごく嬉しい。感謝してる。叔母さんによろしく伝えておいて」という内容だったらしい。
彼とは時折、試合会場で会う。
さわやかな笑顔で挨拶をしてくれるが、直接、彼の口からそれを聞いたことはなかった。
姪からその話を聞いた時、彼の懐の深さ、その郷土愛に非常に胸を打たれたのである。

豊見城高校時代の彼の活躍は目覚しかった。
2年生で高校記録を打ち立て、さらに3年生で更新し、選抜、インハイ、国体を合わせて高校4冠を果たしている。
更なる活躍が期待される中で大学へ進んだ彼だったが、ひととき、その名が聞かれない時期があった。
JOCの強化指定を受けたものの、NTCでの生活は想像以上に過酷で、周囲がどんどん成長していく中で、彼一人、闇の中をさまよっていた。
NTCを出て平成国際大学へもどり、失われた時間を埋めていく中で、やがてチームメイトとも打ち解けた。
自分を受け入れてくれたチームに感謝し、新たな目標に向かって突き進んできた彼。

「ウエイトの魅力は、人を成長させてくれることだ」と、彼は言う。
久しぶりに会った後輩の表情や雰囲気が変わっていることに驚くことがしばしばだと。
彼自身もまた、ウエイトを通して成長した一人である。
栄光に満ちた高校時代、確かに彼は輝いていたかもしれない。
けれども当時より、その表情は心なしか柔らかくなったように思える。

卒業後の進路は?
「選手として中途半端なままで終わりたくはない。もっともっと記録も追及し、いろんな経験を積みたい」と、父親譲りの深い瞳が熱く語る。

先人たちが築いたウエイトリフティング王国沖縄。
その団結力は強く、沖縄の選手たちのことを兄弟のように思っているという彼。
王国の血を受け継ぐリフターの一人として、その誇りが、彼の内に脈打っている。
育んでくれたふるさとへの感謝を胸に、王国の歴史に、鮮やかにその名を刻んでほしい。

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日本代表候補の強化合宿にて
金城聖丸選手は中央後ろ
彼が兄弟のように思っている沖縄の選手たちと一緒に練習

☆金城聖丸選手☆
父は、豊見城高校の金城政博監督。双子の弟・誠丸選手は金沢学院大学へ通う。もう一人、ウエイトをやっている中学生の弟がいるが、その名がメジャーになる日も近いかもしれない。
ウエイトのイメージが強い彼だが、柔道、サッカー、陸上の経験も持つスポーツ万能青年である。非常に身体能力が高く、かつてユース合宿に選ばれた選手の体力測定の結果リストを見た姪が、ずば抜けている彼の数値に驚いたという。
現役時代の姪の、イチオシリフターである。
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