2012/08/08

リフター魂35 北信越かがやき総体①

高校2年生

「動かないでくれ」
62キロ級・本田大智選手(加悦谷高校)のスナッチ3本目。
アジアユースで、彼と友情を育んだ屋良一郎選手(南部工業高校)は祈っていた。

必死に耐える本田選手の肘の緩みを、サイドレフリーは見逃さなかった。
2―1で一度は成功となったものの、協議の末に判定は覆り、その結果、まさかのスナッチ5位。

本田選手にとって初めての経験だった。
ジャークまでの長い待ち時間。
ひとたび折れた心を立て直すことはできなかった。
追い込まれ、1本を差すのが精一杯だった彼。
「練習で挙げている重量なのに、体が動かなかった」と振り返る。
百戦錬磨の川畑勉監督でさえ、なす術がなかった。
それでもトータル2位は立派だと思う。

“赤”をつけるレフリーの苦悩。
自らも競技者であるがゆえに、選手の気持ちは痛いほどわかる。
それでも時に心を鬼にし、公正にジャッジするのが彼らの使命である。
そうでなければ、この競技は成り立たない。

本田選手にとってそれが初めての経験であるなら、今大会でそれを経験できたことを良かったと思える日が、やがて訪れるだろう。
プラットホームは、いつでも君を待っている。

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春の選抜、今大会と、全国大会2冠を果たした生頼永人選手(明石北高校)。
大会新記録で62キロ級を制した彼は、明石北高校の団体優勝の立役者にもなった。

翌々日、控室前の通路に、チームのお弁当を両手に抱える彼の姿があった。
「大変ね」と言うと、「僕が一番下なんで…」と、あどけなく微笑んだ。
その涼しげな瞳に、完全優勝を果たした王者のおごりは見られなかった。

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「インターハイには魔物がいる」
本田選手の結果に驚きを隠せない85キロ級・屋良選手は、自らの試合を控えてそう語った。
その魔物を払いのけ、スナッチで1位に立った彼の口から出たのは、「大会新を出せなくてすみません」という言葉だった。
アップ場での待ち時間が長く、疲れを感じていたという彼。
屋良博之監督は、スタート重量を下げる判断を下した。

ジャークの3本目は惜しくも失敗となったが、それでも圧倒的な強さで優勝した彼は、いくつもの喝采に包まれていた。
表彰式の後、退場する彼を出迎え、真っ先に祝福していたのは生頼選手だった。

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バーベルという架け橋を通って出会った彼ら。
共に高校2年生となり、その生活も折り返しを迎えた。

世界に向かって・・・
日本の誇りを胸に、より強く、そして、心優しきリフターとなってほしい。

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「君は今 希望とともに緑の大地をかけぬける」
 リオへ向かって・・・
高校ウエイト | Comments(2) | Trackback(0)
Comment
ウエイト競技観戦への熱い想いを持ちながら、
相変わらず淡々とクールな語り口の素敵なブログですね。
実は参考にさせていただきたいと、密かに時折チェックしているんです。
特に、チャンピオンなのにお弁当を運んでいる明石北高校・生頼君が微笑ましいです。
こんな裏ネタ、だ~い大好きです
強い人ほど、まずは人徳者であってほしいですもの・・・
今夏の北信越かがやき総体もいろんなドラマや駆け引きがあったのでしょうね。
生で観るとまた違った感動があるのでしょう・・・ね。
またいつかゆっくりお茶でも飲みながら、管理人とウエイトネタで語り合いたいです。
いつもコメントありがとうございます。
今回で4度目のインハイ観戦になりますが、今夏、本当にたくさんの人に出会い、たくさんのことを思わされました。
今大会は高校の体育館ということで、会場が狭く、エコノミー症候群になりそうだったので(笑)、しばしば会場の外へ出ていました。
その結果、試合以外のいろんなことに触れることができました。
普段、選手控室には行かないのですが、上記の理由で、お弁当を運んでいる生頼君にも会えたというわけです。
桂月さんのご期待に添えるように、これからは試合会場ばかりに留まらず、フットワークの良い探偵になろうと思っています。


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